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開発業者勤務(東京・仙台) → 四国松山へUターン。建築・都市・街・不動産・観光などに関するメモ。

四年ぶり、新緑の仙台を走る -二度目の仙台国際ハーフマラソン

仙台、二度目の「仙台国際ハーフマラソン」へ。

仙台は前職での転勤に伴って2年間を過ごした土地で、「杜の都」というだけあって木々の緑が印象的な街。2012年に初めてハーフマラソンを走ったのがこの仙台で、定禅寺通りの並木道の下を走るのは実に気持ちよかった……そのことを遠く松山で思い出しては、もう一度走りたいなと思っていたのでした。ということで、4年ぶり、5月8日に二度目のハーフを走ることに。松山からは伊丹空港で飛行機を乗り継いで、大会前日に仙台へ。

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本のメモ: デービッド・アトキンソン『新・観光立国論』

2015年に出版された『新・観光立国論』(デービッド・アトキンソン著)は、外国人旅行者が増加し、消費の拡大による「爆買い」という言葉が定着した一年を表すような一冊だと思った。

 著者の主張と論旨は明確である。人口が減少する日本においてはGDPを維持するだけでも困難だが、そのような状況下で成長を目指すには「観光立国」により外国人の旅行者を増やすことが合理的であると説く。人口減少下においては移民が効果的であるが、移民政策の困難な”島国”日本では外国人旅行者=「短期移民」が重要だという。


以下に概要をまとめておこう。

日本は「気候」「自然」「文化」「食事」という観光立国の4条件を満たす国であるが、これまでに観光立国・観光産業に力を入れてこなかったことからも伸びしろがあるという。

また、訪日外国人客の特徴を分析すると、訪日数の多い台湾、韓国、中国はそれぞれテーマパークや食事、ショッピングへの関心が高い。一方、ヨーロッパやオセアニアからの訪日数は少ないが、観光における支出額が大きく、日本の文化や歴史への関心が高い。

これは訪日観光客を「外国人」とひとくくりにして見えてこないことであるが、観光立国にはそれぞれの国ごとに求めているもののセグメンテーションとそれによるマーケティングが必要で、その際に「多様性」(ダイバーシティ)はひとつのキーワードとなる。多様性を認識した上で観光コンテンツを細分化し、整備してゆくことが必要で、例えば日本に少ない”超高級ホテル”もそのひとつである。

その中で著者は「顧客」を明確化してゆき、ターゲットを「伸びしろが大きく、支出額が大きい」ヨーロッパやオセアニアからの観光客(=「上客」)に定めてゆく。そして、日本の文化や歴史への関心が高い、ヨーロッパやオセアニアからの観光客を増やすための方法として、まず手をつけるべきは「日本文化の体験」や「神社仏閣という歴史的資産」の整備、つまり「文化財」の整備だと説く。

日本は文化財にかけられる予算も小さいが、世界的に見れば日本の文化財が「地味」であり”ただそこにあるだけ”という状況になっていることからも、現状では不十分である「説明」や「ガイド」が重要であり、魅力を伝えていくことが大事だという。「稼ぐ文化財」というスタイルは日本の文化財に合うのではないかとしている(これは文化財の保存のためにも重要)*1

 2015年6月28日読了

デービッド・アトキンソン 新・観光立国論

デービッド・アトキンソン 新・観光立国論

 

 

*1:このあたりについては、表紙にも「イギリス人アナリスト」と紹介されている著者が国宝や重要文化財の修復を行う日本の施工会社の社長を務めていることにも留意しておきたい。

二度目の愛媛マラソン

先月の話ですが、2月7日に愛媛マラソンを走ってきました。二度目の愛媛マラソン。ランニングのポータルサイト"RUNNET"で人気投票1位にもなったことがあり、1万人が走る全国でも人気のマラソン大会です。

愛媛マラソンのコースは、松山の中心である松山城の「城山公園」を起点に、坊っちゃん列車の汽笛を聞きながらのスタート。途中、約40mの高低差のある通称「平田の坂」を上り下りしたり、松山市北部の旧北条市では遠くに瀬戸内を眺めたりして、また松山城の足元まで戻ってくる。そんな感じです。


青い線が往路約20キロ、赤い線が復路20キロ。ほぼ同じところを行って帰ってくる感じです。


私の場合、マラソンを走ると、練習の過程も含めてその土地への愛着のようなものが芽生えてくるんですね*1……で、松山市の北部、旧北条市のエリアが過半を占める愛媛マラソンでは、どうしてもこの北条のエリアが気になってくる。
さらに、ほとんどが幅員の広い国道を走るコース中で、生活のにおいを色濃く感じられる集落中を走るのもこの北条。沿道に応援の山車(神輿?)や太鼓が出てきてチンドンやっていたり、北条沖に浮かぶ「鹿島」へきれいに引かれた軸線上を走るということもあって、なんとなく、北条の街の歴史とか、文化なんかに思いを馳せるような……地味ではあるけれど、走りながらもそういう体験を得られるのがここかなと。松山の人でもこのエリアをわざわざ訪れる人も決して多くはないと思うんですが、そういうフィールドワークや観光的な意味合いを兼ねるような部分もまた、マラソンの面白いところだと思うわけです。

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正面にこんもりと見えるのが、北条沖に浮かぶ「鹿島(かしま)」

もちろん1万人が走るような市民マラソンとなれば、県外からの参加者を獲得するような「観光」としてのマラソン(コース)、という位置付けも無視できないわけですが、観光の目玉である「道後温泉」はコースに入っていません。ランナーには参加賞として道後温泉の入浴券を配られるんですが、それでカバーしている感じでしょうか。まあ、マラソン→温泉、というのも悪くないですね。現実的には、道後温泉本館沿いをコースに含めることには困難が想像できます。

そのような観光的な観点では、新宿をスタートして東京タワーや銀座、浅草まで巡る東京マラソンや、東田第一高炉跡や門司港などを巡る北九州マラソンなどは観光資源を巡るルートとして面白そうです。かつて走ったことのある仙台国際ハーフマラソンは5月の大会でしたが、コース序盤の「定禅寺通り」の並木道の新緑が鮮やかで、かつここで仙台の"雀踊り"を行うなど、祝祭性にあふれる空間として準備していました。愛媛マラソンは対外的な評価も得ていますが、そのあたりにはまだまだ工夫の余地があるように思います。

*1:同じような経験をお持ちの方も多いんじゃないかと思うんですが。