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開発業者勤務(東京・仙台) → 四国松山へUターン。建築・都市・街・不動産・観光などに関するメモ。

『分断される経済』と「都市再生」

松原隆一郎の『分断される経済―バブルと不況が共存する時代』(NHKブックス)を読んだ。ざっくりと言ってしまえば、話題の『下流社会』について、社会経済学の観点から論理的に補強するような内容。日本では「構造改革」のもとで、大企業/中小企業、正規雇用非正規雇用などの<分断>が生じている、というような話。
本書中の民営化や直接金融化などの話についても興味深く、これはこれで思うところはあるのだが、気になったのは本書中の「都市再生」に関する話だ。
松原は「都市再生」政策について、都市の住みやすさや街並みの美しさ等の評価を排除したものであり、民間主導による<人口集積>と<経済成長>を狙いとしたものだ、ということを法律や経済市場の話などを織り交ぜながら説明している。
で、こんな内容の本書をわざわざ紹介するのは、以前書いた日本橋と首都高の話に関する私の感じる気持ち悪さをなんとなく代弁してくれているように感じたからだ。私の感じる気持ち悪さは、景観の話(言葉)の背後にある違和感、信頼できない、スリカエ、みたいなものだったはず。
ただ本書中では、都市再生は「塩漬けで廃れた」地域の再生をするはずだったのに、現実にやってるのは「人気のある土地」の緩和じゃん、ということを指摘していて、私の感じるところと多少のズレはあるわけだが。
しかし、やはり本書中でも「美」の話になるといまいち歯切れが悪いという気もした。「美」とか「歴史」とかいったとたんマイノリティになる感じがして、どうしたらよいものかコレワ。いや、でも、だからこそ…。