お仲間ですから安心して申し上げますが、やっぱり建築というのはデザインだと思います。今は科学主義という名の下に、ロジックが通っていないとダメのような言い方をしますが、建築というのはそれだけじゃないんです。極端に言えば彫刻みたいなものでね。「構造的にこうすることが理想である」とは、言えるかもしれない。しかし、最終的にそれを使って形にまとめるのはやっぱり感性ですね。それがなかったらいいものはできない。箱をつくればいいというものではありません。
広瀬鎌二/内井昭蔵との対談での発言*1
*
能作君は卒業設計に取り組むにあたり、社会問題や周囲の環境や与件といった、建築の諸条件から建築を組み立てるのではなく、できるだけ純粋に建築を作ってみたかったという。いかにも「若い」言葉ではあるが、あなどってはいけない。そこに批評を読み取れるかどうかを、現実に設計活動をしている立場の人間は試されている。設計というのはやってみると分かるが、依頼主からの要望や、諸雑事への対応を積み上げているだけでも、十分充実した気分になれる。だから世の中には誇りを持って作られてはいるけれども、どこにも新鮮さがない駄作というのが結構たくさんある。