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開発業者勤務(東京・仙台) → 四国松山へUターン。建築・都市・街・不動産・観光などに関するメモ。

国立新美術館 黒川紀章展

国立新美術館に行ってきた。

国立新美術館は、延べ14,000m2の展示スペース(1,000m2の展示室10室、2,000m2の企画展示室2室)、アートライブラリー、講堂、研修室等を有するほか、レストラン、カフェ、ミュージアムショップ等の付属施設の充実も図っています。

とサイトにあるように広くてでかい。建物がでかいということはそれだけである強度を持ちうるのだろう。美術館の前では写真を撮る人がいっぱいいた。でかい建築はそれだけで大味な感じになりそうなものだが、中も気持ちよく過ごせた。ただ中のアトリウム空間は思ったほど広くは無かった。*1

この国立新美術館と、既にある森美術館(@六本木ヒルズ)、もうすぐできるサントリー美術館(@東京ミッドタウン)とあわせると、美術・芸術のエリアは上野から六本木へ、という流れに捉えられる。館内では既に「六本木・アート・トライアングル」なんて地図が配られていて、これら3つの美術館をアート拠点と位置づけている。そしてこれは不動産の流れに通じるものがあるな、と思った。結局カネのなるところにカネが落ち、新しいものができるということだろう(そもそも後者ふたつは不動産開発の枠組みの一部であるが)。

ただ忘れちゃいけないのは独立行政法人による「国立」新美術館であるという点で、我々の納めたうちの多額の税金が投下されているということ。上野の都美館は公募展中心の美術館で、そこが手狭になったという経緯もあるのだろうが、収蔵品を持たないバカでかい貸室がこれだけしれっとできてしまっていいのかな。建築マップにもあるけど、ほんとコンベンションホールみたいなもんじゃないかと。公募展自体を否定する気は無いし、その意義もあるだろうが、個人的にはあまり見に行ったことが無い。
美術界(?)の中でもいろいろなゴタゴタがあったのだろうけど、個人的には業界内で年配の方々と若手との分断は建築界よりもはっきりとしていると思っていて、将来どうなるんだろうな、などと勝手な心配をしてしまう。そんな中に生み出された国立新美術館を哀れんでみたりもする。

2階で行われていた黒川紀章展は、展示室のスペック―広さ、高さを生かした展示だった。壁面の高さ一杯に、建築を紹介したスクリーンが並び、黒川さんの建築作品の歴史を通して知ることができる。
スクリーンには、大きい写真、図面と1:1のスケールの詳細図面、そして大きなフォントによる黒川さんの言葉が添えられる。中でも印象的だったのは、黒川さんが設計した大阪のソニータワーの建替えに建築家の大江匡さんが携わることに対して、「本気か!」と名指しで批判しているソニータワーの紹介。一部を紹介するとこんな感じ。

中銀カプセルの構想をオフィスビルに(ショールーム)として展開した重要な作品であったが、取り壊され建築家大江匡氏が新計画をつくっていると聞いている。 本気か!

一応は建築の保存について考えてきた(いる)つもりの私だが、黒川さんが多くの建築について保存を訴える姿勢からは、「建築の保存」が既に一般化しているような感覚を覚えた。環境問題などと同じように、古い建築は残すべき、と捉えないとまずいんじゃないの?みたいなある洗脳を受けるような感覚。まあこの辺が黒川さんのすごいところでもあるのだろう。
個人的にはEXPO'70東芝IHI館や農村都市計画といった60-70年代の氏のぶっ飛んだ展示を見られて良かった。この頃の実現したプロジェクトとして72年の中銀カプセルタワービルが挙げられるが、これも取り壊されるそうだ。メタボリズムの「(新陳)代謝」という意図は叶わなかったわけだが、計画時のプレゼンテーションを見ると、カプセルの取替えの方法についても明示されていて、けっこう本気だったんだろうなとも思った(異論はあるだろうが)。
黒川紀章キーワードライヴ」という展示で印象に残ったのは「まばたきの葉」。もし自分に子どもがいれば連れて行きたいと思った。

地下のショップは「日本」をテーマにしたであろう商品構成。海外の人に渡すお土産なんかに良さそう。

*1:ところで黒川紀章設計、と謳われているが、サイトにも「設計 黒川紀章・日本設計共同体」とあるように実際に手を動かし詰めたのは日本設計だろう