資生堂アートハウス 谷口吉生の美術館建築
東海道新幹線の線路脇にある資生堂の美術館。出張などの折に新幹線から見ていていつも気にはなっていたのだが、ずっと足を延ばせないでいたのでこの機会に訪れることに。谷口吉生さんの美術館建築っていろいろあるけど、どれも建築目的で訪れる人に対して「ハズレ」の無い、期待を裏切らない建築だなあなんて偉そうに思ったりする。で、やっぱりこの美術館も期待どおり。美術館建築としてはこの建築が谷口さんのデビュー作なのだそう。谷口さんの美術館建築についてwikiからひっぱってくるとこんな感じ。
1978年 資生堂アートハウス
1983年 土門拳記念館
1983年 清春白樺美術館
1989年 東京都葛西臨海水族園
1989年 長野県信濃美術館東山魁夷館
1991年 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、丸亀市立図書館
1995年 豊田市美術館
1999年 東京国立博物館法隆寺宝物館
2004年 ニューヨーク近代美術館新館
2004年 香川県立東山魁夷せとうち美術館
*1
清春白樺美術館とMoMA以降については訪れたことがないが、そのほかの建築について思い出してみると、階段やスロープを用いた空間の展開と展示室間の繋ぎ方、自然光の取り入れ方などが特徴として捉えられるかなと思う。秀逸なランドスケープデザインも挙げられるだろう。
この美術館もその例に漏れない建築なのだろうか。ひとことで表すなら、S字を描く一筆書きの平面を持つ美術館、そう単純化できるかもしれない*2。S字の両端がそれぞれ正方形と円形の展示室で、それらの交わる中心に半円の階段があり、そこからホールに抜けるという構成。
*3
半円の階段を上り、左手のスロープを上がると四角い展示室。壁沿いに絵を見ていくと、四角い展示室の中央の円形の壁に当たり、そこからぐるっとまわっていくと、S字のもう一方の彫刻を中心とした展示室に抜ける。この円形の展示室は、光の抑えられた四角の展示室から一転し、外からの光や風景をふんだんに取り込んだ空間。その展示室の中にも入れ子のように四角い展示室が設けられ、そこを抜けるとまたスロープを上がり、半円の階段に出る。…そしてまた始めに戻る、というようなS字の終わりの無い永遠の運動を繰り返すかのような空間、その運動の中に投げ込まれる空間体験といえるかもしれない。S字の動線をそのまま立ち上げたら美術館になった、というだけではないような複雑さがあるというか、奇妙な感じさえする。