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開発業者勤務(東京・仙台) → 四国松山へUターン。建築・都市・街・不動産・観光などに関するメモ。

藤森建築とインドについて(2)―ねむの木こども美術館 どんぐり

「ねむの木こども美術館 どんぐり」(設計:藤森照信+内田祥士、2006年)を訪れた。(訪問は先に紹介した「秋野不矩美術館」と前後する)

偉そうなことをいうと、上手くなったなあ、という印象である。これまでに藤森さんの建築をいくつか訪ねてきたが、私が訪れたものから思い出しても、茅野の神長官守矢史料館(1991)、タンポポハウス(1995)、秋野不矩美術館(1997)、熊本県農業大学校学生寮(2001)、と時代を追ってゆくにつれ次第にうまくなっているように思う。うまい、というのは藤森建築にとっては必ずしも褒め言葉にならないのだろうが、この「どんぐり」も試しにどんぐり状のボリュームを隠してみると、案外どこかにありそうな建築にも見えてくる。「どんぐり」に付属する低いボリュームは、地形に合わせて次第にヒューマンスケールに落ち着く親しみやすさを与える。どんぐり状の象徴的なボリューム、その中に入るとどんぐり屋根に縁取られた天井高のある空間が広がるが、そこから始まるこの建築の体験は、次第に人間の高さへという、移動に伴うストーリーが織り込まれているともいえる。そして、そのことを踏まえても、建築の名が示すようにやはりこの建築の肝は「どんぐり」にあるのかなと思う。


うーむ、どんぐりなことだなあ。屋根を観察すると、手もみ銅版が建築にざらざらとした表情を与えている。

このような体験を経て、掛川から浜松へと移り秋野不矩美術館を訪れたのだが、そこでゆっくりと建築や絵画を見ていると、秋野不矩の絵画『ラージャラーニー寺院1』に目が留まった*1
*2
そう、これは「どんぐり」なんじゃないかという印象である。題名にもあるラージャラーニー寺院は、インド南東部・オリッサ州の建築様式を示す寺院だといえるだろう。オリッサ地方の寺院はシカラと呼ばれる紡錘状の聖堂が特徴的で、藤森建築とインドとの関連を考えれば、恐らく藤森さんは「どんぐり」にこのシカラを遠く引用してきたのではないかと思った。藤森さんの建築というと、これまで私は北インドに多くみられる木造建築との関連を考えてきたが、「どんぐり」はそれらの木造建築から、いわばインド建築の代名詞といわれるような石造建築への飛躍を表す象徴といえるのではないか――私にはそう思われてならなかった。

*1:絵画といっても、美術館にあった秋野不矩の作品集で目にしたのだけど。

*2:http://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/lifeindex/enjoy/culture_art/akinofuku/schedule.htm より