「カフェ・ラ・ミール」と「別子銅山記念館」―愛媛県新居浜市の建築(1)
お盆休みは愛媛に帰省。実家のある松山から一走りして新居浜を訪れ、いくつかの建築を訪れた。
にいはま、と読む。新居浜は江戸時代に別子銅山が発見されてから、住友家が開発を進め、住友化学など住友グループ各社が生まれた企業城下町であり、瀬戸内海沿岸の工業都市のひとつ。海沿いを少し走ると工場が並んでいる。
別子銅山記念館
「別子銅山記念館」は新居浜の山のふもとに位置している。別子銅山の歴史を紹介し、資料を展示する資料館で、設計は住友本店臨時建築部を起源にもつ日建設計、施工は住友建設(現・三井住友建設)と、別子銅山を基に発展した住友グループ各社の手で設立されている。
この花壇のような物体が建築なのである。このサツキの下に2層(1層は半地下)の展示室が広がっている。神社の境内に位置するため、半地下にしてボリュームを抑え、屋上に植物を施すことで神社全体の調和を意図したのだろう。景観への配慮や屋上緑化という概念が30年以上も前に実現されていることに驚く。
エントランスへのアプローチ。展示室は屋根の傾斜にあわせた2層のレベルで構成されている。薄暗い室内は銅山の内部のようで、銅山では多くの工夫が事故で亡くなったりしたんだろうな…などと考えながらうろついていると、この建築がさながら工夫の墓のように思えてきた…。
Cafe La Miell
新居浜のカフェ・ラ・ミールは谷尻誠さん(Suppose design office)が設計したカフェ。オシャレなカフェとして地元でも有名らしく、昼過ぎに訪れると駐車場は満車。4時頃にはお客さんも一時的に少なくなったけど、夜になるとまたいっぱいになるらしい。
三角形の外観。傾斜した鉄筋コンクリートのフレームを掛けただけの単純な構成。屋上は割栗石を敷きこんでいる。
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内部は地上レベルと半地下のレベルの2層の構成となっていて、単純ながら多様な場が生まれている印象を受ける。
ふと気付いたのは、この建築が「別子銅山記念館」と同じような構成を持っているということだ。立地環境は異なるが、両者とも三角形の断面とそれにあわせた2層の構成であり、外観のデザインも建築とランドスケープの一体化を意図したものとして類似性が指摘できるだろう*2。
ラ・ミールの設計において谷尻さんが別子銅山記念館を参照されたかどうかは分からないが、似たような構成を持つ建築が、かたや資料館、かたやカフェとして同じ新居浜市に存在することが面白く思えた。さらに両者は同じような構成をとりながらも、一方は環境との調和を意図し、もう一方は「三角カフェ」と呼ばれる親しまれているように建築の形態が商業施設のサインとして機能していて、それぞれ全く異なる様相を呈しているのである。
いずれにせよ、どちらもすばらしい建築だと思った。
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参考