黒川紀章『円錐の秘密』―愛媛県新居浜市の建築(2)
愛媛県総合科学博物館
新居浜の愛媛県総合科学博物館。設計は黒川紀章(1994年)。
ガラスの円錐は太陽光を取り入れ、夜には光を放つ。このボリュームはエントランスであり、また、円錐内部を取り巻くスロープが、展示室間を移動する人の動きを可視化させている。黒川作品に多用される「円錐」には様々な意味や機能が込められているが、円錐を使うようになったのはこの愛媛県総合科学博物館の頃からだろう。晩年の黒川建築の特徴である。黒川は亡くなる直前に、「円錐」について次のような詩を残している。
円錐の秘密
円錐は神の幾何学か。
水平の断面は
ニュートンの円軌道。
傾斜の断面は
コペルニクスの楕円軌道。
天空を刺し
天空へと消える幾何学。
寺院の頂に冠された鉛の円錐。
サンクトペテルブルグの円錐。
街のスカイラインの
黄金のスパイアー。
長距離弾道の狂気。
円錐の秘密。
円錐は神の幾何学か。
Urin Toju 黒川紀章 『詩1−アドニスから手紙が来た−』(2007)
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新居浜農業協同組合会館(1967年)は、「坂出人工土地」を設計した大高正人の作品。建物の裏手にある倉庫も大高がデザインしたのだろうか。1966年に開館した「旧大分県立図書館」で磯崎新がみせた「切断」のデザインを想起させる。