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開発業者勤務(東京・仙台) → 四国松山へUターン。建築・都市・街・不動産・観光などに関するメモ。

道後オンセナート2014 9つの「泊まれるアート」をめぐる "HOTEL HORIZONTAL"

2014年は、四国松山にある道後温泉本館が改築されて120周年にあたる。この機会に松山市の道後で開催されているアートフェスティバルが「道後オンセナート2014」である。4月のグランドオープンではライゾマティクスによるプロジェクションマッピング道後温泉本館を使って行われ、街にも影絵などのパブリックアートが点在するなど、道後はこれまでとはちょっと異なる様子を見せている。
今年の年末まで行われるこのアートプログラムの中核を成すのが、9つのホテル・旅館を使った泊まれるアート「ホテルホリゾンタル」。9人のアーティストやデザイナー、建築家らに、9つのホテル・旅館の各1室を「作品」化してもらうというものである。
これらのホテル・旅館の作品には実際に宿泊することもできるが、宿泊客のいないチェックインまでの昼の時間帯は有料での見学も可能*1。ここでは「ホテルホリゾンタル」の9つ全ての作品を見てまわったものを記録として残しておこうと思う。


わが魂の記憶。そしてさまざまな幸福を求めて 草間彌生×宝荘ホテル
Memories of My Soul, and in Search of Diverse Happinesses by Yayoi Kusama at Takaraso Hotel


Memories of My Soul, and in Search of Diverse Happinesses by Yayoi Kusama at Takaraso Hotel

草間彌生による、道後オンセナート・ホテルホリゾンタルの「看板」的な作品。昭和の佇まいを残す、ホテルの洋室・和室、そして広縁のそれぞれに3つの作品・空間が展開している。特に広縁の作品は夜には光るというから、宿泊客だけの特権といえる。

また、ホテル1階にはロビーの一角に「水玉カフェ」がオープン。草間カップで飲み物とお菓子が楽しめる。松山銘菓の「タルト」も赤い水玉に彩られている。作品「水玉強迫」もここで見られるほか、草間彌生のアートに彩られたショーツや靴下などが買える自動販売機も設置されている。(これは、道後オンセナートの総合プロデュースが、衣料メーカーのワコールを母体としたスパイラル(ワコールアートセンター)だからだろう)

http://www.hotelhorizontal-dogo.com/kusama/


はなのいえ 谷川俊太郎×道後舘

Hana no Ie by Shuntaro Tanikawa at Dōgo Kan

草間彌生の作品のあるホテルの隣りに位置する「道後舘」の一室には、詩人・谷川俊太郎が仕事をする部屋というコンセプトで、谷川さんが実際に使用していたパソコンや本などが展示されている。また、庭や浴室など、客室の様々なところに谷川さんの詩が散りばめられている。

この作品はホテルホリゾンタルの作品中、見学としては最長の50分間の鑑賞が可能で、抹茶やオリジナルの茶菓子を頂いたり、室内に設置されたノートに詩を書き残すこともできる。スタッフによる室内のアートの説明も丁寧で、ゆったりとした時間を楽しめた。

道後舘は建物自体が故・黒川紀章の建築作品であることも見逃せない。「はなのいえ」は、黒川さんが「花数寄」と呼ぶ数寄屋を現代風に解釈してデザインした客室と、谷川さんとのコラボレーションともいえるだろう。

http://www.hotelhorizontal-dogo.com/tanikawa/


楽園 荒木経惟×ホテル古湧園

PARADISE by Nobuyoshi Araki at hotel Kowakuen

客室の襖などにアラーキーの写真作品『緊縛』『PARADISE』が展示されている。オンセナート唯一の18歳禁作品。道後はかつて遊郭が置かれた地で、現在も街の一角には風俗店が軒を連ねるという色街の側面を併せ持つが、この作品は道後のそうした一面を覗かせているようにも見えた。

http://www.hotelhorizontal-dogo.com/araki/


Sketch 谷尻誠×道後プリンスホテル

Sketch by Makoto Tanijiri at Dōgo Prince Hotel

Sketch by Makoto Tanijiri at Dōgo Prince Hotel

建築家・谷尻誠さんによる"Sketch"は、客室全体をペンキで塗りたくったもの。3次元の空間に展開する、2次元の絵画のようなアンリアルな世界。この空間は身を置いて体験するだけでなく、カメラで撮影することで本当に2次元であるように見えてくるから不思議。友人や家族で訪れて互いに撮影すると、まるで絵画の世界に人が入り込んだような写真になり、インタラクティブアートとしてもおもしろいと思った。

http://www.hotelhorizontal-dogo.com/tanijiri/


Suuri Taiga / 大草原 石本藤雄×茶玻瑠

Suuri Taiga by Fujiwo Ishimoto at Hotel Chaharu

マリメッコのテキスタイルデザイナーを務めた、愛媛県出身の石本藤雄さんによる作品。リネン類や浴衣をはじめ、砥部焼のカップなど、隅々に石本さんのデザインが散りばめられている。見学するというより、どちらかといえば宿泊してみたいと思わせた。ホテルでは石本さんの作品も販売していた。

http://www.hotelhorizontal-dogo.com/ishimoto/


Time Science ジャン=リュック・ヴィルムート×道後やや

Time Science by Jean-Luc, Vilmouth at Dōgo Yaya

3つの時計の周囲や照明に一本一本描かれた線。そして円形のベッド。これらにより演出された空間はちょっと不思議でちょっと不気味。見学者に特典として配られる、ヴィルムートの絵が描かれたオリジナルのリネンも嬉しいお土産。作家については、越後妻有にあるMVRDVの建築内のカフェ・ルフレを手がけたアーティスト、というと建築方面の人には分かるだろうか。

http://www.hotelhorizontal-dogo.com/jean/


皆川明×花ゆづき

LO by Akira Minagawa at Hanayuzuki

mina perhonenのデザイナー 皆川明さんの作品。床だけでなく、壁や天井にも琉球畳が一面に敷かれている。畳の香りがして、嗅覚でも楽しめる。座布団やトレイに蝶が描かれているなど、ちょっとしたデザインが隠れているのがかわいい。

http://www.hotelhorizontal-dogo.com/minagawa/


椿ヒュッテ KIKI×ホテルルナパーク

Dogo Kamelie Hütte by KIKI at Hotel Luna Park

松山の市花でもある椿のプリントが壁全体に施されている。これらの写真はKIKIさんが市内の松山総合公園で撮影したものだそう。絨毯などもKIKIさんが持参したという。アートイベントでなくても、こんな感じで人の手が加えられた部屋ってもっとあっていいと思った。泊まってみたい作品。

http://www.hotelhorizontal-dogo.com/kiki/


藍 葉山有樹×ふなや

Ai by Yūki Hayama at Hotel Funaya

陶芸家・葉山有樹さんによる作品。江戸期に創業されたという旅館の歴史の醸し出す雰囲気にも合っていて、藍色の一色で彩られた空間が格好良かった。旅館の名前にちなんで「鮒」も描かれている。

なお、旅館 ふなやには「詠風庭」という、川が流れる気持ちのよい庭園が隣接しているが、夜には石川智一の演出によりライトアップが施されている。これもまた道後オンセナートの作品のひとつ。

http://www.hotelhorizontal-dogo.com/hayama/




ホテルホリゾンタルの9つの作品は道後エリアに点在しており、それぞれ徒歩で訪れることが可能だが*2、見学が可能な昼間の時間で周れるのはせいぜい3、4作品くらいだろうか。

ホテル・旅館の作品を巡りながら、その作品と作品との間に広がる街や道後の湯をともに楽しめるとよいだろう。道後温泉本館の周辺は近代的な街並みを見せているが、少し気を配れば、時を重ねてきた建物や神社仏閣、点在するアート、道後で暮らす人の営みも見えてくる。

*1:見学可能な時間や料金、予約受付の有無についてはホテル・旅館にもよっても異なり、場合によっては宿泊の有無等の状況にもよるので、電話で問い合わせるのがよい。記事中のリンク先よりご確認を。

*2:唯一、谷尻誠さんの作品がある道後プリンスホテルは若干離れている。それでも徒歩での訪問は可能。