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開発業者勤務(東京・仙台) → 四国松山へUターン。建築・都市・街・不動産・観光などに関するメモ。

ROUND ABOUT JOURNAL vol.3 特集「都市ビューティ革命」(1)

藤村龍至さんから「ROUND ABOUT JOURNAL vol.3」を大量に送っていただいた。この「RAJ」はいわゆる建築フリーペーパー。若手建築家をはじめとした様々な分野の方のインタビュー等が掲載されている。藤村さんはこの活動を「部活動ノリ」というが、フリーペーパーで(という言い方も語弊があるのかなこのごろは)これだけの密度があるのは凄い。サブテーマ(?)の「表層と深層を架橋せよ!」というのは個人的に非常に興味があるところ。自分もゆっくり考察してみたいけど、まずは各コンテンツの感想をだらだらと。

昨年春に青山のプリズミックギャラリーで藤村展を見た際、藤村さんのいう「超線形プロセス」にはそれほど興味を惹かれなかったが、今回やっと意図するところが分かったように思う。そのときは、プロセスの可視化というのは例えば安藤忠雄さんが(って安藤さんに限らないけど)スタディ模型を並べて展示するのとどこが違うのか?という疑問が残った。模型の並んだ光景だけで比較しても、素人目にみれば今までの「市民に開かれた」的なアプローチと何も変わらない。
しかし藤村さんのアプローチがそれらと一線を画すのは、設計のプロセスを「徹底的に」可視化して、トレースできるような状況をつくるところにある。そうした超線形な設計プロセスは、建築家の天才的ひらめき、いわゆる「ジャンプ」を許さないもので、そこに両者の違いがある。それは一見、組織設計事務所的なアプローチのように思うが、(藤村さんも自覚されているようだけど)それによって逆に作家性が強められている点が興味深い。
こうした方法論を含めて、藤村さんらは社会的なもの(例えば組織設計事務所やまた/あるいはオーナーやディベロッパーなどかな)と対立しないで、かつ、アトリエとして自立する方法を模索しているが、それこそが今日のアトリエ建築界のおかれた状況をあぶりだしているように思う。
藤村さんが「協働の体制がアトリエ設計事務所が生きる道」ということには共感できる。ただそれが、今日建築家が「ブランド」として、言い換えれば表層的に関わってゆく状況とは異なるところを志向しているということなのだろう。

中村さんの建築への取り組み方がよく分かるインタビューだった。
「外観スケッチから入るというより、建築と人の距離がすごく近いところで全体をデザインするという方法は新しい建築の論理だと思っていますね」
という中村さん。「Lotus Beauty Salon」や「House SH」にみられるような、人と建築の距離が近いところでのデザイン。それを「おもてなし」の感覚というのだそう。ある種の「サービス業」としての建築家像、というのもありそうな気がした。
そういう見方からすると、クライアントや建築の使い方にうるさそうな安藤忠雄さん*1だって、どれだけサービス精神旺盛な人なんだろう、と思ったりもする。


いわゆるアトリエ系の言論に久々に刺激を受けたので、続きはまた。1月に行われたイベントを起こした"RAJvol.5"などについても、後日あらためて記したい。
→続き http://d.hatena.ne.jp/ida-10/20080309/p2(2008.3.9追記)

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*1:人から聞いたりすることからの印象だったりするものだけど。